老人会で勉強会を開催しました。竹内クリニック院長 竹内重人
[2015年05月31日]
「健康で長生きするため」にはどうしたらよいか?
現在の国内の死亡原因を上位から見ていくことで、「健康で長生きするため」の必要な日常の注意事項を一緒に考えていきましょう。
- 国内の死亡原因は?
死亡原因1位 がん、2位 心疾患、3位 肺炎、4位 脳血管疾患、5位 老衰、6位 不慮の事故、7位 自殺となっています。
がん死亡の内訳は?以下の通りです。
男性1位 肺がん、2位 胃がん、3位 大腸がん、4位 肝がん、5位 膵がん、6位 前立腺がん
女性1位 大腸がん、2位 肺がん、3位 胃がん、4位 膵がん、5位 乳がん、6位 肝がん、7位 子宮がん、8位 卵巣がん(2012年)
- がん検診を受けましょう!
がんは、早期発見が大切です。早期にみつけることで、根治術が可能です。一方、痛みが出現してから初めて病院を受診して、がんが見つかった時は、すでに進行がんのことが多いです。早期がんに対して根治術が成功したら元通りの生活が送れますが、進行がんの場合は治療に難渋します。
- がんを予防するためには?
次に、がんの発生を予防する為には、どの様な生活習慣に気を付ければよいでしょうか?
最も大切な事は、禁煙です。禁煙の重要性については、次の項で説明します。次にお酒を飲みすぎない事も大切です。日本酒で1合、またはビールで大瓶1本程度以内が適量です。
野菜、果物、乳製品をはじめ、色々な種類の食事をバランスよく摂取することが大切です。腹8分目で、脂肪は控えめに。食べ物から適量のビタミンと繊維質のものを多くとって下さい。
食塩は1日10g以下で。
熱い飲食物は摂取しないようにする。焦げた部分や、カビの生えたものは避ける様にする。
定期的に運動を行う。太り過ぎず、痩せ過ぎないようする。
更に近年、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスと肝臓がんの関連、パピローマウイルスと子宮頸がんとの関連、ヘリコバクターピロリ菌と胃がんとの関連が明らかとなっています。これらについては、かかりつけの主治医と相談しましょう。
- タバコと癌の関係
がん予防において、特に大切なものは禁煙です。日本からタバコがなくなれば、日本人のがん死亡は25%減少すると言われています。例えば、タバコを吸う方は、肺がんによる死亡率は4.5倍に、喉頭がんでは30倍以上になります。また、アルコールとタバコを同時に摂取する方では、がんの危険率は一層高まります。喫煙者の男性で、日本酒換算で1日平均2~3合飲むと1.9倍、3合以上では約2.3倍に、がんの発生率が上昇すると言われています。
- 生活習慣病、メタボリックシンドロームについて
死因の2位心疾患、4位脳血管疾患は、いずれも血管の動脈硬化が大きく関係しています。メタボリックシンドロームは、放置することにより、動脈硬化が進行し、血管に重大な障害を起こします。メタボリックシンドロームは、内臓の脂肪が原因で、コレステロール・血圧・血糖値が高くなり(高脂血症、高血圧、糖尿病)、それらが複数重なった状態を言います。治療方法は、それぞれの疾患によって異なりますが、減量や運動、食事の改善によって、高脂血症、高血圧、糖尿病のいずれの疾患においても改善傾向を示します。逆に、内服薬やインスリン注射等で治療を受けていても、患者本人が生活習慣を改善する努力を怠れば、高脂血症、高血圧、糖尿病いずれの疾患においても改善は難しいです。
いずれにしても、死亡原因の2位と4位が、動脈硬化が大きく関与しているので、生活習慣病、メタボリックシンドロームに常日頃から注意を向けるべきです。
(補足:心疾患や脳血管障害において、動脈硬化が殆ど関係していない疾患も多くあります。)
- 肺炎(死亡原因3位)を防ぐにはどうしたらよいか?
まず、風邪予防が基本です。風邪を予防する為には、睡眠を十分にとること、体を冷やさないこと、室温と保湿に注意すること、栄養をバランスよくとること、疲れを溜めないこと、など何れも大切なことばかりです。そして、もし風邪をひいてしまっても、病初期にしっかりと睡眠をとれば、治りは早いです。逆に軽症の風邪でも、病初期に仕事などで無理をすれば、こじれてしまい長引いてしまいます。一旦こじれてしまうと肺炎につながることもあります。
早めの受診が大切です。特に高齢者の場合、肺炎になっても発熱がない時もあります。また、風邪様症状や発熱があっても、原因は様々です。早めに受診して、症状や原因に合った適切な治療を早めから受けることが大切です。
高齢者の場合、口腔内ケアが重要と言われています。口の中の菌が、気管の方に入ってしまい、肺炎を起こすことがあります。
嚥下機能の低下を防ぐことも大切です。
肺炎球菌やインフルエンザのワクチンについて、医師と相談しましょう。
- 転倒や骨折に注意しましょう
高齢者の生活の質を大きく低下させるものとして、転倒による骨折があります。また、転倒しなくても、骨粗しょう症により、胸腰椎の圧迫骨折をおこします。骨折すると、寝たきりになることも多いです。実際に、多くの高齢者が骨折をおこします。転倒や骨折を予防するにはどうしたらよいでしょうか?
まず、本人が転倒をしないように注意して日常生活を送る。
足腰の筋力の低下予防を平素から気を付ける。
骨粗しょう症の予防も大切です。骨粗しょう症の治療薬の内服、カルシウム摂取、紫外線に適度にあたる等、があります。骨粗しょう症の予防には薬や食事も大変重要ですが、加えて大切な要素に、適切な運動があります。脚や腰など身体に適切な負荷をかけることで、筋力の低下予防のみならず、骨粗しょう症の予防にも有効であると言われています。