「在宅ネット in 伊丹」で喘息の講義

[2015年06月07日]

気管支喘息を有する在宅患者のケアについて、医師から訪問看護師、ケアマネージャーへアドバイス
伊丹市 竹内クリニック 院長 竹内重人

「気管支喘息のある在宅患者で、感染症が疑われたら、すぐに主治医に連絡しましょう」
風邪をきっかけに、気管支喘息の発作をきたすことはよくあります。早期の対応が大切ですので、すぐに主治医に連絡しましょう。インフルエンザは特に要注意です。一般外来においても、インフルエンザをきっかけに喘息発作をきたす方は、毎年何人か遭遇します。「これまで喘息と診断されたことがなかったのに、今回のインフルエンザをきっかけに、喘息発作をおこしました」「かれこれ20年間喘息発作がなかったのに、今回のインフルエンザをきっかけに、喘息発作をおこしました」と言ったケースです。
喘息を持つ患者がインフルエンザに罹患すると急いで対応が必要です。
最近、点滴での抗インフルエンザ薬が国内で使用可能になりました。喘息などの疾患を持つ方が、インフルエンザに罹患しても、点滴での抗インフルエンザ薬は、有効性が高いです。

「室内環境を整えましょう」
ダニ、ハウスダスト、ペットなどは、喘息の悪化要因です。ケアマネージャーやヘルパーが訪問した際には、こまめな換気や掃除機で掃除をしましょう。
室内の温度や湿度にも注意しましょう。

「喘息薬の副作用について:動機、頻脈、手のふるえ、」
気管支拡張薬には、胸がドキドキしたり、手がふるえたりする副作用があります。在宅患者で心臓を患っている方も多いです。慢性心不全や不整脈のある方が、気管支拡張薬を処方されて頻脈になったら、心臓にかなりの悪影響を及ぼします。
最近、喘息の薬を処方されて、動機、頻脈、手のふるえ等の症状があれば、すぐに主治医に連絡しましょう。
また、吸入ステロイドの副作用に、口腔内真菌症があります。最近、食事の味がしないとか、舌が真っ白になっていたら疑われます。予防は吸入ステロイドの後のうがいです。

「吸入ステロイドは、主治医の指示通り続けましょう」
喘息発作で「呼吸が苦しい時」の処置は勿論大切です。それに加えて、平素からの発作を予防する対応もとても大切です。室内環境(ダニ、ハウスダスト、ペット等)を見直す事、睡眠時間を十分とる事、風邪をひかないようにする事、外気が冷たい時にはマスクを着用する事、他人のタバコの煙を避けたり、排気ガスを避けたりする事。これらの事は、全て大切ですが、薬剤としては、吸入ステロイドによる治療が最も大切です。
気管支喘息は、気道の慢性的なアレルギー性の炎症が原因です。吸入ステロイドは、気道の炎症をしずめて、次の発作をおこりにくくします。気道の炎症が持続すると、気道の平滑筋が増殖して内腔そのものが狭小化します。また、粘膜上皮細胞が剥がれ落ちて、過敏性が亢進します。吸入ステロイドは、単に発作を予防する効果があるだけではなく、気道の形態変化(リモデリングといいます)を防ぐ効果もあります。
簡単に言うと、吸入ステロイドには、少々の刺激で喘息発作がおこりにくくする状態を保つ働きと、気管支の内腔が狭くなることを防ぐ働きの2つがあります。

「喘息発作後のケアも大切です」
喘息発作がおさまって、しばらくすると吸入ステロイドを自分の判断で中止される方も多いです。もちろん3か月間、発作がない状態が持続すれば、減量もしくは中止の指示が主治医からでることもあります。
喘息発作がおさまって、自分では治ったつもりでも、気管支の炎症はおさまっているとはかぎりません。気管支喘息の発作の後は、気管支の粘膜が荒れていて、少しの寒冷刺激やゴミの刺激によって、次の発作が起こり易い状態なのです。気管支の粘膜が再生される迄、主治医の指示に従って治療を受けてください。
「一度喘息発作が起きれば、次の発作が起こり易くなります。何回も何回も起こしていたら、次の発作が一層起こり易くなります。今は気管支の粘膜が荒れている状態なので、3ヶ月から6ヶ月、発作のない状態を維持して下さい。発作のない状態が長く続けば、粘膜が再生されて、発作が起こりにくくなりますよ」という様に、私は患者さんに説明しています。とにかく、発作がおさまっている期間の治療が大切なのです。
吸入ステロイドは薬剤としては、一番大切なものです。それに加えて、
ケアマネージャーや訪問看護師が、生活環境を整えて下されば、発作頻度は減ります。

「喘息発作と慢性心不全増悪の鑑別は難しいですよ」
例えの話ですが、呼吸苦があって主治医が往診に行ったとします。聴診器で、肺野に喘鳴を聴取されました。しかし、医師であっても、喘息発作なのか、慢性心不全の急性増悪なのか、聴診だけでは、判断がつかないこともあります。私の診療経験でも両者(喘息発作と慢性心不全増悪)が併発していることも多々ありました。
いずれにしても、患者さんの容体が変われば、早めにドクターコールしてあげてください。
以上は、「第37回在宅療養ネットワーク in 伊丹」で報告した内容です。

第37回在宅療養ネットワーク in 伊丹 開催日:平成26年4月21日 場所:中野の郷ケアセンター

① 一般的な尿路管理のポイント やまもとクリニック泌尿器科
② 気管支喘息の日常生活 竹内クリニック
③ 癌患者さんの家での看取りとは クリニック内藤
④ 認知症の基礎知識 林医院

次回の予定
第38回在宅療養ネットワーク in 伊丹 開催日:平成26年9月29日 場所:中野の郷ケアセンター
テーマ:
① 骨粗しょう症について。  竹内クリニック
② 健康寿命を延ばす。 クリニック内藤・在宅リハビリ部

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